2005/10/27

認知心理学の登場(ロカポ誕生の記録:7)

認知心理学の登場

これまでの投稿で書いたとおり、ジオコードに要求される要素はすべて相反するものでした。
つまり
・絶対的な情報量(コードがカバーする地域と、精度によって決まる)
・表示桁数(同じ情報量なら、N進法のNを大きくすればある程度短くなる)
・表示文字種類(N進数を表すにはN種類の文字が必要。Nが多くなると扱いにくくなる)

さらに技術的要素と「扱いやすさ」も相反します。
・外部データベースを使用すると、データがないとデコードできない
・データ圧縮などの複雑なアルゴリズムを使うと、いざというときに手計算では復号できない
これを全部やろうというのは、いささか無謀な挑戦に思えます。

確かに技術的な観点で言えば、これ以上は八方塞がりです。ただ、今回は「人間が使いやすい!」をテーマにしているので、読むのはコンピュータでなくて人間です。そこで「認知心理学」の登場となります。

認知心理学については私は素人ですので、専門的な事は書けませんが、さわりだけ。もし間違っていましたらご指摘頂ければ幸いです。
認知心理学に「チャンク」という考え方があります。電話番号で言うと090XXXXXXXX と書くと分かりにくいですが、090-XXXX-XXXXと書くと、見易さ、読みやすさ、が向上します。もともとの電話番号では市外局番、市内局番、番号で分かれています。人間が一度に処理できる物事の数を「短期記憶容量」と言って、最大7個までと言われています。(参考:"The Magical Number Seven, Plus or Minus Two" by George A Miller)
ただし、単純な個数ではなく、意味のあるかたまり単位の個数で、これを「チャンク」と言います。
例えば、7つ以上のアイテムを羅列してみます。
「キャベツ、ソーセージ、ヨーグルト、大根、チーズ、鶏肉、牛乳、にんじん、牛ミンチ」
アイテムは9つあり、脳が一度に9つの情報を受け取るので、そのまま覚えるのは難しいですよね?
これをこうするとどうでしょう?
肉類は「牛ミンチ、ソーセージ、鶏肉」
野菜類は「キャベツ、にんじん、大根」
乳製品は「牛乳、ヨーグルト、チーズ」

整理すると覚えやすいですね。これはまずアイテムの分類で3チャンクに分けることで、脳に一度に処理させるアイテムを3に落とし、それぞれのカテゴリでさらに3つずつのアイテムを扱わせたからです。

もう一つ例を挙げます。つぎの二つの文字列は、技術的にはまったく同じ情報量です。でも読んでみてください。覚えられますか?多分二つ目の方は、すぐに記憶・再現できると思います
「mnisnytasohtddaaoanoaz」
「toyotahondanissanmazda」
おわかりのように、一つ目はランダムな文字列ですが、二つ目のほうはよく見ると
「toyota honda nissan mazda」と並んでいます。これが頭の中で車メーカーという単位で4チャンクとして処理されるので記憶が容易になります。
さらに
「toyota-honda-nissan-mazda」と区切りを入れると、技術的な意味では区切り文字の分だけ桁数が増えていますが、さらに読みやすくなっています。

さらに厳密には認知心理学とは異なるかもしれませんが、語呂合わせや、リズムや韻など、他にも記憶を助ける方法はいろいろとありそうです。

元々は学校の論文を書くときにいつも参考にしていた「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則
バーバラ・ミント著
」に、マジック・ナンバー「7」の事が載っていたのですが、たまたまこの本を読み返していて、「この辺りの工夫をジオコードに取り入れてみたら、情報量を犠牲にせずに読みやすいコードができるのではないか?」とひらめきました。
早速図書館をいくつか回って、認知心理学やら記憶術、暗記法の類の本をかき集めてきました。


続く....

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